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南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

●半日ガイド体験記(1)音信不通


半日ガイド体験記 (2004年6月の記録)

 ∬第1話 音信不通

とにかく、急な話の展開だった。

添乗員時代の先輩で古い友人である横田さん(仮名)が、数年来の顧客を連れてとうとうトルコ・ツアーにやってくると聞いた。しかし、聞いたのは本人からではなく、共通の友人桃ちゃん(仮名)の口からだ。
私たち家族に会いたくてアンタルヤをツアーに組み込んだというのに、肝心の電話がいっこうに繋がらないという。

本当ならここで、考えられるもう一つの理由を疑うべきだったが、そのとき私の頭にはFAXのことしか浮かばなかった。
トルコに引越しする際に日本から買ってきたFAXを、修理のため日本に持ち帰る代わりに、10年も前に使っていた古いFAXを一時しのぎにと運び込んだのだったが、これがまた不調で仕方なかった。受話器を取ると同時に切れてしまうという状態にしばしば陥るのだ。

FAXに罪を着せてしまった私は、いずれは連絡がつくだろうと、横田さんのFAX番号やメールアドレスを教えてもらおうとも思いつかなかった。
それから3週間ほどが経ったろうか。そろそろツアーの出発日も近い。いくらなんでも連絡が来ないのはおかしいではないか、と疑ってかかったとき、途端に頭に閃いた。
「もしや、古い番号にかけているのでは?」
およそ1年ほど前、夫が家族への絶縁宣言をした時に、同時に電話番号を変更したのだが、もう何年も連絡を取り合っていない横田さんの手元には、引越し当時の古い番号しかない可能性が大だった。

慌てて桃ちゃんにFAXを流した。新しい電話番号と携帯の番号をMさんに伝えてくれるように。出発前に間に合ってくれと祈りながら。
しかし桃ちゃんは、折悪しく添乗で留守中だった。
考えられる方法はそうなかった。
今になって思えば、イスタンブールにある手配会社に連絡を取って、日本語ガイド経由でメッセージを伝えてもらうべきだったのかもしれない。しかし、正直そこまでは気が引けた。
結局、桃ちゃんから伝え聞いたアンタルヤでの宿泊予定ホテルに、メッセージを残しておくことにした。
とにかく会えさえすればよいのだから、と。

アンタルヤの中心にある由緒ある5ツ星ホテル、Tホテルが横田さん率いるグループの宿泊ホテルだった。断崖の上に張り出すようにして建てられたこのホテルは、眺望は抜群。アンタルヤのイスティクラール通りとも呼ばれるウシュックラール通りやカレイチへも徒歩圏内である。
メッセージをしたためた小さいカードに名刺を添えて、Tホテルのレセプションに届けに行ったのは、宿泊予定日の前日であった。

ホテルにメッセージを残して帰った午後、イスタンブール在住で、2~3日前からフェティエ滞在中の友人目加田さん(仮名)から電話があった。
ちょうど学校の懇談会に出席中だった私は、あとで折り返しかけることを告げて携帯を切った。
夕方になって目加田さんにかけてみると、翌日アンタルヤに向かいたいが、都合はどうか、という打診だった。
頭の中で忙しく時計が動いた。グループが着くのはきっと夕方。1泊しかしないとすれば、会えるのはその時間しかない。

「夕方出掛けるかもしれないのですが・・・」
できれば、夕方以降はスケジュールを空けておきたかった。
目加田さんの声は朗らかだった。
「そんなに遅くはならないから大丈夫。出掛けるなら留守番してるから。じゃあ、遅くとも2時くらいには着きますね」
うまく時間のやりくりができるだろうか・・・。
私はなんとなく不安で仕方なかった。

 (つづく)

∬第2話 すれ違い



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